
85mmは「ポートレートの神焦点距離」と言われる。
50mm F1.2 GMを使い込んだあとで、85mm F1.4 GM IIを初めて使ったとき、最初に感じたのは「ボケの質がまったく違う」という感覚だった。50mmのボケとは異なる、奥行きのある立体的な写りと、背景が滑らかにとろけていく柔らかさは、確かに他では得られない表現だ。
ただし正直に言うと、670gというボディサイズの存在感と、20万円超という価格に見合うかどうかは、使う人の状況によって大きく変わる。
この記事では、α7IVで85mm F1.4 GM IIを実際に使って感じたことを、スペック比較・競合レンズとの違い・向いている人・向いていない人まで正直に書く。
目次
- FE 85mm F1.4 GM II 基本スペック
- 初代GMとの比較:何が進化したか
- 描写・ボケ質の実写レビュー
- AF性能の評価
- 競合レンズとの比較
- 向いている人・向いていない人
- 買う前に知っておくべきデメリット
- よくある質問(FAQ)
- まとめ
FE 85mm F1.4 GM II 基本スペック
| 項目 | FE 85mm F1.4 GM II |
|---|---|
| 型番 | SEL85F14GM2 |
| 焦点距離 | 85mm |
| 開放絞り | F1.4 |
| 最小絞り | F16 |
| 最短撮影距離 | 0.80m |
| フィルター径 | 77mm |
| 重量 | 約670g |
| 絞り羽根 | 11枚 |
| 防塵防滴 | あり |
| 参考価格 | 約22〜25万円 |
初代GMとの比較:何が進化したか
85mm F1.4 GM IIを語る上で、初代GM(SEL85F14GM)との比較は避けられない。
| 項目 | 初代 SEL85F14GM | GM II SEL85F14GM2 | 変化 |
|---|---|---|---|
| 重量 | 820g | 670g | -150g(-18%) |
| 最短撮影距離 | 0.85m | 0.80m | 5cm改善 |
| AFモーター | 2基 | 4基(リニアモーター) | 大幅高速化 |
| 絞り羽根 | 11枚 | 11枚 | 変わらず |
| 防塵防滴 | あり | あり | 変わらず |
| フィルター径 | 77mm | 77mm | 変わらず |
最大の変化は150gの軽量化とAFモーターの4基化だ。
初代820gはポートレート撮影中に「重い」と感じることが多かった。670gになったことで、長時間の撮影ロケでの疲れが体感的に違う。特に手持ちで縦位置を多用するポートレート撮影では、この差が積み重なる。
AFの4基化は、動体追従の速さと精度に直結している。初代では歩いてくる被写体へのAFが少し遅れる感覚があったが、GM IIは瞳AFとの組み合わせで「AFに意識を向けない」状態で撮れるようになった。
描写・ボケ質の実写レビュー

解像力:開放から恐ろしいシャープネス
GM IIの最大の強みは、F1.4開放から中央も周辺もシャープであることだ。
一般的なF1.4レンズは開放では中央は良くても周辺は甘くなる。GM IIはその弱点をほぼ排除している。
α7IVの33MPという高画素センサーに対して解像が追いついており、等倍で見ても「開放で撮った」とは思えないクオリティだ。
ボケ質:他の85mmとは別次元の滑らかさ
85mm F1.4 GM IIのボケ質は、俺が使ってきた中で最も「滑らかで自然」だ。
XA(超高度非球面)レンズの採用により、背景がガサガサとした輪郭なく、溶けるようにとろける。玉ボケも同心円状の輪郭が出にくく、夜景を背景にしたポートレートで特に差が出る。
50mm F1.2 GMも優れたボケを持つが、85mmの圧縮効果と組み合わさった立体感は別物の表現になる。
逆光耐性:フレアをほぼ感じない
逆光のポートレートはフレアとゴーストが出やすいが、GM IIはナノARコーティングとXBA(超高度非球面)レンズの組み合わせで逆光に非常に強い。
日が当たる窓際での撮影で、ほぼフレアが出ずコントラストが保たれたまま被写体が浮かび上がる描写は、初代GMより明確に改善されている。
AF性能の評価
瞳AFとの組み合わせが最強
α7IVのリアルタイム瞳AFとGM IIの4基リニアモーターの組み合わせは、ポートレート撮影において「完璧に近い」AFを実現する。
歩いてくる人物・小走りの子供・横に動くモデル、いずれのシーンでもAFが外れることがほぼない。初代GMで感じていた「動体への追従の甘さ」は完全に解消されている。
動画でのAF精度
バリアングル搭載のα7CIIと組み合わせてポートレート動画を撮ると、AF迷いのない滑らかなフォーカス移行が得られる。85mmの画角で動画を撮るとF1.4の被写界深度が非常に浅く、AFがわずかでも迷うと破綻するが、GM IIはその心配がほぼない。
競合レンズとの比較
Sigma 85mm F1.4 DG DN Art vs GM II
| 項目 | Sigma 85mm F1.4 DG DN Art | GM II |
|---|---|---|
| 重量 | 625g | 670g |
| 最短撮影距離 | 0.85m | 0.80m |
| 価格 | 約11〜13万円 | 約22〜25万円 |
| AF速度 | 速い(ただしGM IIより劣る) | 最速クラス |
| 逆光耐性 | 良好 | 非常に良好 |
| ボケ質 | 美しい | さらに滑らか |
Sigma 85mmはコスパ最強の選択肢。価格差約10〜12万円に対して、AF速度とボケ質の差がある。趣味用途で予算を抑えたいなら、Sigmaで十分に満足できる。仕事でポートレートを撮る・コンペに出す・最高の1枚が欲しいなら、GM IIの価値が出てくる。
SONY FE 85mm F1.8 vs GM II
| 項目 | FE 85mm F1.8 | GM II |
|---|---|---|
| 重量 | 371g | 670g |
| 価格 | 約5〜6万円 | 約22〜25万円 |
| 開放絞り | F1.8 | F1.4 |
| ボケ質 | 良好 | 圧倒的に滑らか |
| AF速度 | 速い | 最速クラス |
85mm F1.8はコンパクトで軽くコスパが高い。ボケの量は0.67段の差(F1.4 vs F1.8)で実は大きな差ではない。ただしボケの「質」(滑らかさ・輪郭の消え方)はGM IIが圧倒的に上だ。
予算と用途別おすすめ:
- 趣味用・家族写真:85mm F1.8(5〜6万円)で十分
- 趣味でこだわりたい・コスパ重視:Sigma 85mm F1.4 DG DN(11〜13万円)
- 仕事・最高品質を求める:GM II(22〜25万円)
向いている人・向いていない人

向いている人
- ポートレート・ブライダル・ファッション撮影をメインにしている
- 開放F1.4の「溶けるボケ」を表現に使いたい
- AFの信頼性を最優先したい(仕事・一発勝負のシーン)
- 初代85mm GMからのアップグレードを検討している
向いていない人
- 旅行・スナップが撮影の中心(670gは日常持ち歩きにはやや重い)
- 予算が15万円以下(この価格帯ならSigmaがコスパ優秀)
- 初めての単焦点レンズとして購入を考えている(50mm F1.8やFE 85mm F1.8から始める方が失敗が少ない)
- 動体(スポーツ・野鳥)撮影がメイン(望遠域の方が適している)
買う前に知っておくべきデメリット
①670gの重量は「軽くない」
150g軽くなったとはいえ、670gは重量級だ。85mmという焦点距離はポートレート撮影で被写体から2〜3m離れる必要があり、それなりに体力を使う。
α7IV(658g)+85mm GM II(670g)=合計約1.33kg。これを1日数時間手持ちで撮影する現場では疲れを感じる。
②最短撮影距離0.80mは中望遠として普通の範囲
「もう少し近づきたい」と感じるシーンがある。0.80mで被写体を大きく写したいときは85mmの画角特性上、撮影距離を縮めるより被写体に近い焦点距離を選ぶ方が自然だ。
③価格22〜25万円の判断基準
「良いレンズだからいつか買う」という買い方をすると、使う機会が来たときに金額の後悔が残りにくい。ただし「ポートレートをたまにしか撮らない」なら、Sigma 85mmかSony 85mm F1.8で先に試すのが賢明だ。
よくある質問(FAQ)
Q. 初代85mm GMから買い替える価値はあるか?
A. ある。150gの軽量化・4基AFモーターによる追従精度の向上・逆光耐性の改善、3点すべてが現場で体感できる差だ。特に動体ポートレートや屋外ロケでの差は大きい。
Q. 50mm F1.2 GMと85mm F1.4 GM IIはどちらを先に買うべきか?
A. 日常スナップ・旅行・多用途なら50mmが先。ポートレート専門・ウェディング・ファッションなら85mmが先。両方持つことで「圧縮効果の違い」と「ボケの質の違い」が使い分けられる。
Q. α7CII(バリアングルモニター)との組み合わせは良いか?
A. 非常に良い。バリアングルで動画撮影をするとき、85mmの浅い被写界深度でも4基AFモーターが正確に追従する。ポートレート動画・ウェディングムービー用途に強い。
Q. Sigma 85mm F1.4 DG DNとの価格差は何に払うのか?
A. 主に3点:①ボケの滑らかさ(XAレンズ)、②AF追従の速度・精度(4基リニアモーター)、③逆光耐性(ナノARコーティング)。趣味用途ならSigmaで十分だが、仕事・作品の品質を突き詰めるならGM IIの優位性は明確だ。
まとめ:85mm F1.4 GM IIは「ポートレートを突き詰める人」のレンズ
85mm F1.4 GM IIの結論を正直に書く。
買って良かったと思う人:ポートレートを本気でやる・仕事で使う・初代GMから買い替えを検討している人。ボケの質・AFの信頼性・逆光耐性、すべてが最高峰で、価格分の価値は確かにある。
急がなくていい人:趣味で週1回撮る・旅行スナップが中心・予算が限られている人。Sigma 85mm F1.4かFE 85mm F1.8で先に「85mmの世界」を体験してから検討する方が後悔が少ない。
50mm F1.2 GMのボケと85mm F1.4 GM IIのボケは「似て非なるもの」だ。85mmの圧縮効果と組み合わさったGM IIの滑らかなボケは、ポートレートに唯一無二の立体感と温度をもたらす。「いつかは85mm」と思っているなら、迷ったときの基準は一つ——「ポートレートを撮る機会が月に1回以上あるかどうか」だ。
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