
はじめに
「F値を小さくするとボケるって聞いたけど、なんで?」
カメラを始めると必ず出てくる疑問です。
「F1.2は大ボケ、F8はパキッとシャープ」という結果は知っていても、なぜそうなるのかを理解している人は意外と少ない。
ぼく(チュートラール)も最初はそうでした。でも原理を理解すると、ボケをコントロールする感覚がまったく変わります。シンプルに解説します。
F値とは「レンズの絞りの開き具合」
F値=光の通り道の広さ
F値(絞り値) とは、レンズの中にある「絞り」という光の量を調整する羽根状のパーツの開き具合を数値で表したものです。
数値が小さい(F1.2・F1.8など)ほど絞りが大きく開き、数値が大きい(F8・F11など)ほど絞りが小さく閉じます。
| F値 | 絞りの状態 | 光の量 |
|---|---|---|
| F1.2 | 大きく開いている | 多い |
| F2.8 | 半分程度 | 中程度 |
| F8 | かなり閉じている | 少ない |
| F16 | ほぼ閉じている | 非常に少ない |
なぜF値が小さいとボケるのか?
「光の束の広さ」がボケの正体
ボケの原理を理解するキーワードは「光の束(こうのたば)」です。
カメラのレンズは、被写体の1点から出た光をセンサー上の1点に集めることでピントを合わせています。これが「合焦(ごうしょう)」の状態です。
ところがピントが合っていない部分(ピントより手前・奥の被写体)は、光がセンサー上の1点に集まりきらず、小さな円として映ります。これを「錯乱円(さくらんえん)」といい、これがボケの正体です。
F値が小さいほど絞りが大きく開き、レンズに入る光の束が太くなります。光の束が太いほど、ピントが外れた部分の錯乱円が大きくなる——つまりボケが大きくなります。
逆にF値を大きくして絞りを閉じると、光の束が細くなり錯乱円が小さくなるため、ピントが外れた部分もシャープに写ります。これが「被写界深度が深い(ピントが合う範囲が広い)」状態です。
被写界深度とは: ピントが合って見える範囲の奥行きのこと。浅いほどボケが大きく、深いほど全体的にシャープに写る。
ボケの大きさに影響する3つの要素
F値だけがボケを決めるわけではありません。ボケの大きさは3つの要素で変わります。
① F値(絞り)
F値が小さいほどボケが大きい。これが基本です。
ぼくが使っている 50mm F1.2 GM はF1.2まで開けられるため、背景が大きく溶けるような柔らかいボケが出ます。同じ50mmでもF4のレンズと比べると、ボケの質感がまったく違います。
② 焦点距離(レンズの望遠度)
焦点距離が長いほど(望遠になるほど)ボケが大きくなります。
同じF2.8でも、24mmと200mmでは200mmのほうがはるかに大きくボケます。望遠レンズが「ポートレートに向いている」と言われる理由のひとつがこれです。
③ 被写体・背景との距離
- 被写体に近いほどボケが大きくなる
- 背景が被写体から遠いほどボケが大きくなる
同じレンズ・同じF値でも、被写体との距離を縮めるだけでボケが大きくなります。「ボケない」と悩んでいる場合、まず被写体に思い切り近づいてみることが効果的です。
ぼくの実体験:F値とボケの感覚
85mm F1.4 GM でポートレートを撮るとき、ぼくは基本的にF1.4〜F2の範囲で使います。
F1.4は背景が大きく溶けて被写体が浮かび上がる表現ができますが、ピントの薄さ(被写界深度の浅さ)から目元にピントを合わせたつもりが耳がボケすぎる、という失敗も起きやすい。
F2に絞ると少し被写界深度が深くなり、顔全体がシャープに写りつつも背景は十分ボケる。「どこまでボケさせてどこはシャープに残すか」をF値で微調整する感覚が、ポートレート撮影の面白さのひとつです。
まとめ
- F値=絞りの開き具合。小さいほど大きく開く
- ボケの正体は「錯乱円」。光の束が太いほど錯乱円が大きくなる
- ボケはF値・焦点距離・距離の3つで決まる
- ボケを大きくしたいなら:F値を下げる・望遠レンズを使う・被写体に近づく
「なんとなくF値を下げればボケる」から「なぜボケるか分かって使う」に変わると、撮影の選択が主体的になります。まず手持ちのレンズで一番小さいF値に設定して、被写体にぐっと近づいて試してみてください。
チュートラール / ブログ「αの視点」
使用機材:SONY α7IV・SONY α7C II

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